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株式会社マツリカ

『Sales Tech大全』著者のキャリア論。 成長できるのは日本?アメリカ?これから何が必要?

さまざまな角度から営業という仕事に携わってきた中谷氏ならではの『営業のキャリア論」。Vol.2では、日本とアメリカのセールスの違いやキャリアを積み上げていくにはどちらを選ぶべきか、テクノロジーが爆速で進化するなかでセールスに求められることは何か、などについて中谷氏の考えを伺います。

『Sales Tech大全』著者のキャリア論。
成長できるのは日本?アメリカ?これから何が必要?
中谷 真史

中谷 真史

(株式会社マツリカ 新規事業部長/プロダクトオーナー)

2013年に大手外資系製薬会社へ新卒入社し、国内売上額日本一を経験。コンサルティングファームでコンサルを学び、営業組織コンサルにおいて実績を残したうえで、2018年に株式会社マツリカへ参画しセールステック領域へ。デジタルセールスルーム「DealPods」、「DealAgent」を立ち上げ、社内起業。現在は米国カリフォルニア州在住。著書は『セールステック大全』(2024/09/30、プレジデント社)。

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水野 歩

水野 歩

(株式会社ディプコア 代表取締役CEO)

法人営業としてキャリアをスタート。神戸支社長・中国の現地法人副社長・本社営業部長などを歴任し、社長賞・社長賞特別賞・ベストマネージャー賞などを受賞。人材紹介会社に転籍後、日系スタートアップやグローバル日系企業に特化した人材紹介事業を立ち上げ。総粗利実績は500,000,000円以上で、個人で年間売上1位・年間決定数1位を獲得。2017年に株式会社ディプコアを設立。中小企業診断士、事業承継士。

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日本とアメリカ、セールスの違い

水野 :カリフォルニア在住の中谷さんにぜひお聞きしたいのが、「日本とアメリカのセールスにどのような違いがあるか」ということなのですが。


中谷 :前提として、違いはすごくあると思います。マクロな視点で見ると、セールステックのプレイヤーが多いですし、現場で実際に活用されていることが多いですね。組織体系や仕事をするときの仕組みの部分はどんどんアップデートされているので、スピード感が違います。ガートナーやフォレスター・リサーチのようなシンクタンクや研究機関がすごくしっかりしていて、さまざまなリリースを出すのですが、研究結果やデータをもとに各社が意思決定をして、現場がどんどん変わっていくみたいな。そういう印象がすごくあります。


ミクロな視点でもけっこう違いはあると思いますが、白黒つけにくいというのが本音です。たとえば、セールスパーソンのレベルだと、下限値は日本の方が高いと思います。アメリカには半分騙すような感じの人もいますからね。この前、「車を乗り換えようかな」と思っていて提案を受けることがあったんですよ。僕は、いまの支払っている額との差分だったり、長期的に考えたときのコストメリットだったり、そういうことを気にしていたんです。でも、もらった提案は「新しくてカッコイイ車が欲しいだろう?何のために君は毎日がんばって稼いでるんだ?」みたいな感じで。そんな話はしてないから!と言って断りましたけど(笑)。


一方で、ハイレイヤーで考えると正直わからない部分があるんです。全体的にアメリカのほうが雑だし、失礼なところが多い印象があります。でも、専門性を高めていったり、さまざまなデータを取りやすくして改善につなげていくみたいな、いわゆる『THE MODEL』が生まれた背景のようなところはとてもしっかり考えられています。何かに特化している人は、その強みをどんどん磨いていけるし、インセンティブがものすごくうまく設計されているので、日本よりもスペシャリストにちゃんと報酬が支払われるという側面があります。それぞれの領域でスペシャリストがちゃんと生まれて、評価を獲得し、その人たちのデータに基づいたノウハウが循環して次のスペシャリストを生むサイクルができているので、そういうことを踏まえると日本より進んでいると感じますね。



▶︎ スペシャリストか、ゼネラリストか


水野 :「専門性」というキーワードが出てきました。営業のキャリアという文脈で考えると、スペシャリストと横断的にいろいろできるのと、ご自身ではどちらが良いと思いますか?



中谷 :基本的には、いくつかの領域でスペシャリストを目指すのが良いと思います。営業であれば、インサイドセールスとフィールドセールスをしっかりやって、プラスアルファで他にも何かできるという具合です。どれかひとつではなく、専門性の高い領域が複数あると良いですよね。


これは自分のキャリア形成のときにすごく意識していました。たとえばですが、営業って世界中にたくさんいるじゃないですか。ずっと営業のままだと埋もれてしまうと思ったので、違う専門性を手に入れようと、内勤業務のトップだと思っていたコンサルティングファームに行ったんです。


コンサルをやってみてわかったことは、実は営業ができる人が少ないということでした。なので、それなりに営業ができて、合わせてコンサルもできるとしたら、すごく希少価値が上がると考えたんです。加えて営業改革などの営業コンサルまでできるようにして、さらにそこにテクノロジーを追加する。そうすることで、同じ経験をしている人なんてほとんどいないという状態になりました。


日本にはざっくりと300万人くらいの営業パーソンがいると言われていますが、この300万人で勝負をすると僕よりも売れる人はたくさんいます。コンサルは10万人と言われていて、僕よりすごい人ばかりです。でも、営業コンサルをやらせたら僕よりすごい人はほぼいなくなり、テクノロジーを掛け合わせたらもう競合はいないです。こういう感じで、これまでキャリアをつくっていきました。



水野 :中谷さんはさらに「アメリカのリアルな情報を持っている」というのが加わりますから、すごいですよね。話を戻すと、海外と比較して日本の営業が誇れるのはどういう部分だと思いますか?



中谷 :「個」としての営業の品質だと思います。特に「おもてなし」と呼ばれる日本の文化に代表される顧客対応の品質ですね。データやテクノロジー、仕組みの部分ではなかなかアメリカに代表される欧米諸国には勝てないのではないでしょうか。このような、現場のゲリラ戦で勝つ、ランチェスター戦略のニッチ戦略の部分だと思っています。



水野 :ありがとうございます。「日本企業で営業をする意味や価値ってなんだろう?」という質問だったらどうでしょうか?



中谷 :営業をするだけであれば、そこまで意味や価値はない気がしますね。純粋に「営業がしたい」「営業を極めたい」なら、外資系企業に行ったほうがいいと僕は思います。一方で、営業以外も視野に入れて、いろいろな経験を積んでキャリアを重ねていきたいという場合は、日本企業で営業をやる意味があると思います。


たとえば、日本の大企業にはジョブローテーションがあるじゃないですか。外資系企業の場合はセールスのジョブで雇われたときに、基本的にはセールスの中でだけ役職が上がっていきます。つまり、セールスで雇われた人には、ビジネスディベロップメントの仕事をするチャンスはほとんどないということです。役職に比例して給料もあがっていきますから、セールスの部長まで行った人が「マーケターになりたいです」「企画がやりたいです」と言っても難しいんですよね。営業一筋で生きていく!と心に決めているのであれば外資系企業が良いと思いますが、いまは営業をしているけどゆくゆくはキャリアチェンジがしたいとか、将来的に起業を考えているという場合は、日本企業のほうが望むキャリアを手に入れられるかもしれません。



▶︎ 正解はどこにあるのか?


水野  先ほどの『THE MODEL』に関連してお聞きしたいです。日本のSaaS業界でも『THE MODEL』を続ける会社と変えていく会社が出てきていると思います。アメリカではどうなっているのか、そして日本は今後どうなっていきそうだと思いますか?



中谷 :これは難しいですね。『THE MODEL』を分業体制にするという文脈で使うとすると、それ自体は変わっていくと思います。これは『THE MODEL』が正しいとか間違っているという話ではなくて、市場などにあわせてやり方をどんどん変えていくべきということだと思います。


たとえば4分割されたレベニューの組織があったとしたときに、「インバウンドとアウトバウンドはわけた方がいいよね」という議論があったり、「パートナーセールスってやっぱり独立して考えた方がいいよね」という議論があると思うんです。扱うものが多くなったり、流通する情報が増えるごとに組織が改変され、細分化されていく。細分化が進んだ結果、サイロ化して連携が取れなくなっていく。そこからまた再統合みたいな流れになり、これをくり返すと思います。なので、個人的には『THE MODEL』に固執する必要はないと思っています。


アメリカでも『THE MODEL』をベースにしている会社はたくさんありますが、企業の成長フェーズと業態によってだいぶ様子が異なる印象です。すごく歴史がある大企業では、大手のクライアントと深い付き合いをしているので、日本のSIerと同じようにアカウントセールスやプリセールスがいます。そう考えると、目的や市場の状況に合わせてより良いやり方を模索し、必要に応じて変え続けることが重要なのだと思います。



これからの営業に求められるもの

▶︎ 必要な能力と考え方


水野 :AIなどの技術がものすごい勢いで進化しています。その中で、営業にはどのような能力や考え方が必要だと思いますか?



中谷 :ひとつはテクノロジーへの適応です。もうひとつは、「もっと勉強しましょう」でしょうか。ちょっと偉そうなのですが、僕は “日本のセールスパーソンは勉強しなさすぎ問題” があると感じています。勉強というと書籍を読んだりすることだと思われるかもしれませんが、そうではなくて。情報を入れて、自分の見解を持つことだったり、その見解をアウトプットすることだったり。これをくり返すことを “勉強” と言いたいですね。


というのも、日本の場合はひとつの会社に長く勤めるケースが多いじゃないですか。そうすると、その会社で流通している情報に浸ってしまうと思っています。他社の営業の方に話を聞きに行っても良いですし、あえて業界の垣根を超えてこれまで交わらなかった方と接点を持つことでも良いと思います。新しい情報に触れて、その情報について調べて、「それはこういうことなんだろうな」と自分なりの解を持つことが必要だと思うんです。


極端な例ですが、たとえばインサイドセールスが強い会社にいたら、勝手にアポイントが降ってきて、それが当たり前になることってあると思うんです。でも、そういう人って外に出たときに価値がないですよね。なので、まずは情報を入れる習慣をつくることが重要な気がしますね。



水野 :テクノロジーへの適応については、どのあたりまで深掘りするのが良いと思いますか?


中谷 :大前提として、セールステックの基礎はおさえておきたいですよね。あとは、ご自身が所属する、もしくは担当している業界の最新動向は常にアップデートしておく必要があると思います。たとえば建設業界の方であれば、アンドパッド社のことくらいは知っておかないと話にならないでしょう。自分と顧客に関わるものは、最新の情報を持っておかないと、セールスとして信用してもらうのは難しいと思います。いろんなインプットをして、さらに自分なりの示唆を出すことができて、やっと顧客に信用してもらえるという感じですね。



▶︎ 活躍している営業の共通点とは


水野 :まわりで活躍していらっしゃる営業の方々も似たような感じなのでしょうか。共通点があればお聞きしたいのですが。


中谷 :くり返しの内容で恐縮なのですが、みなさんめちゃくちゃ勉強してると思います。インプットとアウトプットをずっとくり返していて。僕は自分の組織に「学び続け、変わり続ける」ということを良く言うのですが、このサイクルを回し続けられる人はやっぱり強いと思います。


水野 :サイクルを回し続けることで、量が質に転化していくということですよね。ちなみに、ご自身も若手のときはたくさんの量をこなしたのでしょうか?



中谷 :僕自身は、行動量は多くなかったです。どうにかしてさぼろうとするタイプなので(笑)。ノバルティスファーマで売上日本一になったときは、確かKPIが1日10件訪問だったのですが、僕は平均で2.5件くらいだった記憶があります。


その代わり、思考量が多かったです。僕はものすごく市場分析をするタイプなんですよ。担当しているこのエリアでは、どの製品がどれくらい売れていて、どれだけのマーケットになっているのか。競合は何%のシェアを持っていて、エリアの中で占有率が高いのはどの病院とどのクリニックなのか。そういうことをまず徹底的に調べるんです。


そして、自分の得意先において、患者さん何人分を競合の製品から切り替えてもらえれば、自分のシェアがこれくらい上がるというシミュレーションをして、そのシミュレーションを達成するためのアクションプランをつくって、、、ということを本当に緻密にやっていました。当時はツールとか使えなかったので、電卓とボールペンで(笑)。


行動量が落ちると不安になるので、みんなはとにかく訪問件数を確保するんです。でも、そうすると行動の質が落ちてしまう。だから僕は考え抜いた数件の顧客に対してのみ提案します!というスタンスでした。



水野 :ありがとうございます。行動量も重要ですが、「成果につながるポイントはどこなのか」をしっかり考え抜くのは本当に大切ですよね。あまり書籍を読まないということでしたが、「これは必読」というものがあれば教えていただきたいのですが。


中谷 :いくつかありますが、まず『チャレンジャー・セールス・モデル』は読んでおいた方が良いと思います。あとは『隠れたキーマンを探せ!』です。これは買い手側の社内組織力学みたいな話です。ここまではセールス系の書籍ですね。最後は『ファスト&スロー』で、直感で結論を出してしまったために、論理の破綻に気付けないみたいな。そういう思考のクセとかその背景に何があるのかなどが学べるもので、ビジネスパーソンとしてちゃんとレベルアップして欲しい後輩に薦めています。



営業と同じく、選考も「等価交換」であるべき

水野 :自社の選考をする立場でもあると思うのですが、どういうスタンスで選考していますか?書類や面接でのポイントについてお聞きしたいです。



中谷 :書類では、その人のストーリーを読み取ろうとしますね。これまでにどのような人生を送ってきた方なのかを知りたいので、職歴から学歴まで結構ちゃんと見ます。セールスの場合は売上の実績だけじゃなく、その売上をつくるために何をしたのかにすごく興味があります。組織に対する働きかけかもしれないですし、自分を変革するためのものかもしれないですし。そういうことを書類から拾いあげようとします。


面接ではロジカルであるかどうかを見ています。あと、「僕があなたを採用する理由は何ですか?」という質問を必ずしています。採用する側として、僕が候補者の方にギブできるのは「セールステックに興味があるんだったら、成長企業でアグレッシブにどんどん挑戦できる環境と、セールステックの最先端に携わるという経験を提供できます」ということです。


一方で、僕がテイクできることは何かを確認するために先ほどの質問をしています。圧迫面接みたいな印象を与えてしまうと申し訳ないのですが、採用も営業と同じく等価交換であるべきだと考えていまして、等価交換が成立するかを確認するための質問です。簡単に言えば、Win-Winになるためにお互いに何が提供できるのかということですね。



水野 :等価交換というのはおもしろい表現ですね。最後に、今後の目標についてお聞きしたいです。



中谷 :アメリカでスタートアップをやりたいと思っています。この実現に向けて、二段階のステップを考えています。


一段階目は、マツリカの中でいま進めている次のプロダクトを成功させて、何らかの形でイグジットすることです。会社としてのIPOや事業としての売却かもしれないですし、僕がMBOして事業を買い取る可能性もあると思います。いくつかやり方があると思いますが、社内起業の結果として何かしらイグジットを経験するまではマツリカでがんばろうと思っています。


そして二段階目のステップで、アメリカでスタートアップをやりたいです。この目標を実現するために、僕自身が「学び続け、変わり続ける」ことが大事だと思っています。



水野 :わかりました。今日は貴重なお話をありがとうございました!



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