はじめに
インターネット黎明期にプログラマーとしてキャリアをスタートし、システム設計やプロジェクトマネジメントを経験。その後、複数回の転職を経て、自社製品の企画開発やeコマース事業の立ち上げなどに携わってきた佐藤様。フリーランスエンジニアとしての経験もお持ちで、インターネットを軸にさまざまな事業にいろいろな立場・役割で関わり、キャリアを重ねてきました。
勤めていた会社が大手企業にグループインすることになり、それを機に40代半ばで新しい環境にチャレンジすることを決心。2024年にモニクルに入社します。現在は執行役員 プロダクト本部長として事業のグロースに取り組んでいる佐藤様に、組織づくりのやりがいやキャリアとの向き合い方について伺いました。
転職前の状況
これまでのキャリアについて、簡単に振り返っていただけますか。
キャリアのスタートはプログラマーでした。当時はまだダイヤルアップ接続の時代で、クライアントサーバシステムの構築などを行っていました。入社から2年くらいで設計やプロジェクトマネジメントを任されるようになり、早い段階で管理職的な立ち位置を経験したことが、現在のキャリアにも大きく影響していると思います。
その後、インターネットで流行ってきたこともあり、「インターネット業界で働くのがカッコイイ」というミーハーな気持ちで2社目のデジタルガレージという会社に転職しました。
そこでは自社製品の企画開発のほかに、当時のTwitter(現在のX)に関わっていました。初期のTwitterに日本で最初に投資・業務提携したのがデジタルガレージで、サンフランシスコの本社に行って開発者とコミュニケーションを取りながら、まだ英語版しかなかったプロダクトの日本語化に携わるという経験もしました。
Twitterの日本語化も担当されていたのですね。その後についても教えてください。
私自身、社会に出てからは会社勤めをしていましたが、元々は独立心が強いタイプでした。そのため、32歳の頃に「フリーランスに挑戦してみよう」と思い、長く勤めたデジタルガレージを退職して独立したんです。個人で事業をやったり、クライアントワークをしたりしていたのですが、そのときにお手伝いしていたのが前職の会社です。仕事でのやり取りを重ねていく中で「正社員として来ませんか?」とお誘いをいただき、再び会社員になったという経緯があります。
前職にはWebディレクターみたいなポジションで入社し、スクラム開発を導入してみたり、EC事業の責任者として仕入れから配送、カスタマーサポートまで全体を統括したりしていました。
その後、会社の方針でアニメグッズの自社開発を行うことになり、商品開発部を立ち上げました。キャラクターの知的財産を保有している大手出版社などと交渉し、アニメグッズを企画して製造し、流通に乗せるところまで、幅広く担当していました。
実際の店舗も運営していたので、レジ打ちや品出しをやることもあって、インターネットの枠を超えて、何でも屋さんという感じで仕事をしていました。キャリアの王道から少し外れたユニークな経験でしたが(笑)、個人的には良い経験ができたと思っています。

そこから転職を考え始めたきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは会社の状況が変わったことです。前職はもともとIPOを目指していたのですが、あるとき大手出版社の完全子会社になるという判断がなされました。
目指していた目標を失ってしまったという気持ちと、大手企業の100%子会社で働くことに前向きになれなくて、転職を考え始めたんです。これは私の個人的なイメージで実際はそんなことはないと思っているのですが、子会社で働くということには、意思決定のスピード感などにおいてちょっと息苦しい印象を持っていました。
そのとき私は40代半ば。これまでとは違う環境で新しいチャレンジをするなら、年齢的にも体力的にも次が最後のチャンスだと思いました。そういう経緯もあり、転職を考え始めたんです。
なるほど。希望する業界や分野は決まっていましたか?
もう一度チャレンジするなら、インターネットの世界が良いと考えました。商品開発部の立ち上げや実際の店舗運営をしているときは少しインターネットから距離があったので、技術トレンドなどはよくわかっていませんでした。
でも、やっぱりインターネットが好きだったので、不安を感じつつも挑戦してみようという気持ちが強かったです。年齢は不可逆で、若いころには戻れないので、これから先の人生で仕事をがんばるなら、好きな分野で勝負しようと考えたんです。
転職活動について
転職活動を開始した際、まず何から始められましたか?
最初は、これまでの棚卸しとして職務経歴書を作成しました。社会に出てからの20年以上をさかのぼって整理することは大変な作業でしたが、自分自身の良い振り返りになったと思います。その後、いくつかの転職支援サービスに登録しました。
エンジニアのバックグラウンドがある佐藤さんには、多くのスカウトが届いたのでは?
ありがたいことに、いくつかお声がけをいただきました。エージェントの方から提案される求人を見ながら「いまはどういう業界や分野が流行っているのか」を勉強するような状態でしたね。
エージェントから多くの連絡が来る中で、コンサルタントの村田の話を聞いてみようと思ったのはなぜなのでしょう?
私のバックグラウンドを汲んだ提案をいただけたことはもちろん、何よりもしっかりとこちらの話を聞いてくださる方だという印象を持ったからです。
これはあくまでも私のケースですが、エージェントの方からいただく連絡で多かったのが、企業の求人をたくさん送ってくださるというものでした。私の経歴を見て、スキルに合いそうなものを送ってくださったと思うのですが、「なぜこの求人が私に合うと思ったのか」という理由の部分がわからない提案が多かったんです。
「こんな会社があるのか」「こういう分野が注目されているのか」と学べることがあったものの、十数社分の求人が送られてきて「どれがいいですか?」と言われても、答えるのが難しくて、、、。
ディプコアの村田さんの場合は、3〜4社くらいの求人が「なぜこの求人を提案したのか」とセットで送られてきました。やり取りが始まってからも、私のこれまでのキャリアやいま考えていることを割とちゃんと聞いていただけたので、印象が良かったですね。
スキルはもちろん、働き方や収入など、転職を考える際には検討することがたくさんあると思います。そういうことも含めていろいろと話ができたということでしょうか?
そうですね。印象に残っているのは、自分の強みを確認できたことです。ひとつの会社に長く勤めていると、自分の強みや市場価値がわからなくなってくると思います。把握しづらくなってくるというか。
村田さんとの会話では、同年代の人は何を考えてどんなことをしているのかなども含めて、客観的な話をいろいろと聞かせてもらいました。相対的な比較を通じて、「ここらへんに自分の強みがあるのかな」と認識できたことはありがたかったですね。

活動する中で「転職の際にゆずれないもの」や「転職で手に入れたいもの」はございましたか?
「働きやすさ」でしょうか。一度入社したら比較的長く働くタイプですし、今回が最後の転職という気持ちがあったからです。
「働きやすさ」というのは、私の中では殺伐としていないイメージです。「アットホームな職場です」とは違っていて、誠実な組織文化があることや経営と近い立場で仕事ができることを希望していました。また私はこれまでモノづくりをしてきたので、プロダクトやサービスを通じて会社への貢献が実感できることも、「働きやすさ」のひとつでした。
村田とのやり取りの中で、印象に残っているエピソードはありますか?
村田さんとの出会いからモニクルへの入社が決まるまで、実は1ヶ月ほどしかありませんでした。その間、村田さんからの紹介で1社だけ別の会社のカジュアル面談を受けたんです。その会社は私が希望するポジションがなく、結果的にこちらからお断りさせていただいたのですが、「他のポジションであればこういう仕事ができたかもしれないですね」という感じで、今後のキャリアの可能性を提示してくださいました。
転職が決まる、決まらないだけではなく、「その環境は私のキャリアにとってどのような可能性があるか」をフラットに提案してくれる方で、伴走型というか、一歩引いて見守りつつ支えてくれるスタイルが印象的でした。
モニクルに入社を決めた「決め手」は何だったのでしょうか?
代表の原田とカジュアル面談をしたときに、当時のモニクルが抱えていた課題に対して、自分の強みが活かせると感じたことが大きいです。
少し具体的にお伝えすると、これまでのキャリアを棚卸ししたり、村田さんとやり取りしていく中で、自分の強みを整理することができました。ひとつは、技術についての知識があること。もうひとつは事業をグロースさせた経験。いわゆる0→1も、1→100も、両方の経験があります。そして最後は目的を持って組織を運営してきたこと。そうした自己認識があった中で、当時のモニクルにはまさにその強みを活かせる環境があると感じたんです。
その後、現場のメンバーとも面談をさせてもらいましたが、どういう課題感があるのか現場の声を聞いてみたときに、自分の強みが活かせるというか、役に立てそうな感覚が持てました。また、重視していた経営との距離の近さについても、現場の方との面談で確認することができました。
「経営との距離の近さ」とは、具体的にどのような?
いくつかあるのですが、わかりやすい例が現場の定例会議に経営陣が出席するというものです。経営陣は現場の困りごとや何をいまがんばっているのかがつかめますし、現場は中長期的な経営の観点や大きな方向性を把握することができます。そういう経営との距離の近さも、非常に魅力に感じました。
現在の状況
2024年にプロダクト部長としてモニクルに入社されましたが、実際に働いてみての感想を教えてください。
一番印象的だったことは、誠実な方が多いことです。社内ではよく『大人ベンチャー』という言葉を使うのですが、まさにモニクルのバリューである『誠実・卓越・敬意』を体現しているプロフェッショナルが揃っていると感じています。
これは私見ですが、ベンチャー特有の「一発当ててやろう」という雰囲気や、周りを押し退けてでも成果を残そうとする山っ気がなく、落ち着いて、相手への配慮を大切にしながら接してくれるカルチャーなので、組織のまとめやすさにもつながっていると思います。
転職活動時に重視していた「モノづくりでの貢献」はいかがでしょうか?
良いプロダクトやサービスをつくって運用し、事業の成長に寄与できていると感じています。現在はプロダクト本部長として、モノづくりの中心で会社にコミットできている実感があります。2025年からは執行役員も務めており、当初望んでいた環境はすべて手に入れられたと思います。
以前のご自身と比較したときに、変化や成長を感じる部分はありますか?
「人に任せること」の意識が変わったと思います。これまでの私は、手が回らない部分は自分がやればいいと考えがちでした。しかし現在は、信頼できるメンバーにしっかりと任せ、その代わりそれぞれのメンバーが気持ちよく働ける環境づくりに注力するようになりました。
自分が動くのではなく、組織を動かすことで事業をスケールさせるようになり、マネージャーとしての視座が一段上がったように思います。
ご自身で動かなくなったということですが、どういうときに仕事の手応えを感じますか?何か具体的なエピソードがあればお聞きしたいです。
メンバーが育っていると実感できたときに、一番手応えを感じますね。
これはプロダクト本部としての取り組みなのですが、次世代のリーダー育成を進めています。機会があればいつでもリーダーとして仕事ができるように、その予行演習というか、素振りができる仕組みをつくりました。
この方針をメンバー全員に伝え、メンバーのうちの数人が次のリーダー候補だということもオープンにしています。リーダー候補のメンバーは、明らかにパフォーマンスが上がりました。活動量も増えていますし、発言の内容にも変化が出てきています。リーダーシップを発揮し始めているのをみるとうれしく思いますし、「やって良かったな」と感じています。
わかりやすく変化があるものですか?
全然違うと思います。リーダーシップを発揮できるメンバーが増えてきたら組織のパフォーマンスも上がりますし、組織としてもさらに大きな成果を出せるようになると思います。
なるほど。それでは今後の展望について教えてください。
『金融の専門知識がなくても、正しい意思決定ができる人を増やす。』がモニクルのパーパスです。このパーパスに対して、『金融の力で、安心を届ける。』というミッションを掲げています。これらの実現に向けて、提供できるサービス内容や金融商品については、まだまだたくさんの伸びしろがあると考えています。
伸びしろを埋めていこうとすると、どうしてもプロダクト自体が増えたり、プロダクトの中身が多様になったり、いろんな変化が起きてきます。そういう意味で、変化に耐えうる人材の育成や組織づくりに注力したいです。プロダクト本部全体で、お互いに助け合いながら変化に対応できるようにしたり、それを良しとする文化をつくっていきたいと思っています。
これも変化のひとつかもしれませんが、金融リテラシーに対する需要が高まっている印象があります。
そうですね。2024年から新NISAと呼ばれている制度がスタートし、投資を始める方がとても増えました。そして、いざ始めてみると、「こういうことをもっと知りたい」であったり、「ここはもうちょっとスムーズにできないか」であったり、いろんなご要望やご質問が出てきています。

金融商品にも投資信託や株式、債券やFXなどさまざまな種類がありますから、お客様のニーズが多様化していて、それぞれについて深く知りたいという需要をすごく感じています。だからこそ次のリーダーを育成し、多様化するさまざまなニーズに対して各自が主体的に向き合えるようにしています。
加えて、隣接する組織の業務について理解しましょうという取り組みも進めているところです。これは、お互いを助け合う文化を醸成することを目的にしているのですが、自分の専門分野のほかに、隣の組織についても詳しくなろうというものです。
自分の役割を果たすことは大切ですが、それだけでは縦割りになってしまい、変化に向き合うときの対応力が限定的です。たとえば自分の専門分野にはリソースの80%を使い、残りの20%は他の誰かのサポートや隣の組織の業務理解に使う。そうすることで、お互いに助け合いながら変化に対応できるプロダクト本部になると考え、個人の目標管理制度などとも絡めながら、取り組んでもらっています。
最後に
いま転職を考えている方や今後のキャリアについて悩んでいる方に、メッセージがあればお願いします。
今後のキャリアをどうするか考えるというのは、ある意味で大きなイベントだと思います。でも、必ずしも「転職をすること」がゴールではないと思っています。新卒の場合は内定をもらうことがひとつの区切りだったりしますが、中途の場合はもう少し複雑というか。
今後のキャリアについて考えるということは、自分の中にうまくいっていないモヤモヤする気持ちがあったり、「こうすればあれができるかもしれない」という希望があったり、いろんなケースがあると思うんです。
いろんな可能性がある中で、それを実現できそうな環境を見つけ、そこに自分を移動させることが大切だと思います。それが転職という人もいれば、同じ会社の中で部署を変えるとか、ポジションを変えることだという人もいる。
要は、キャリアについて考えることって、自分の可能性を伸ばすチャンスというか、良いきっかけなんだと思うんです。だから、自分が心からやりたいことや過ごしたい環境、興味や情熱を持って取り組める方向性を明らかにして、それが手に入る場所を探す行動だと捉えると、割と前向きな気持ちでフラットに考えられるのではないかと思います。
「この業界で働きたい」とか「この役職がいい」とか、そういう考え方もありますが、もう少し深掘ってみて「なぜそう思うのか?」を探ってみる。その結果、理由がネガティブなものでもいいと思います。後ろを向かなくちゃいけないような状況なんだから仕方ない、と開き直ってしまえば、「じゃあここからどうしようか」に意識が向くと思いますし、これまでとは違ったものが見えてくるかもしれません。
(本記事は、2026年4月に実施したインタビュー時点の内容であり、現在とは一部異なる場合があります)



