はじめに
慶應義塾大学を卒業後、デジタルマーケティング企業へ新卒入社した一条様。大手小売企業向けの新規事業開発をディレクション・PMの立場で5年間にわたり牽引してきました。
順風満帆なキャリアの裏側には、「ギリギリまでこだわって開発したプロダクトを世の中にリリースできなかった」という苦い経験や周囲との事業に対する熱量差への葛藤がありました。
使われるプロダクトをつくり、直接的に顧客と向き合いたいーーそんな強い想いを胸に転職活動をスタートしたものの、「転職先で同じ悩みが繰り返されるのではないか」という不安も抱えていたと言います。
30〜40社とのカジュアル面談を経て、最終的に選んだのは妥協のないプロダクト開発と顧客と真正面から向き合う組織文化を持つ株式会社Scovilleでした。現在はPMM(※)として、AIを活用した採用支援プロダクトの事業推進をリードしています。
転職活動中にディプコアのエージェントと交わした「2社目選び」をめぐる会話を踏まえ、どのような意思決定をしたのか。そして、2社目として入社した株式会社Scovilleでは、前職と同じ悩みを繰り返すことなく仕事ができているのか。リアルに語っていただきました。
(※)PMM:Product Marketing Managerの略。プロダクトの価値を最大化し、市場・顧客に届けるための戦略立案・推進などを担う役割。
転職前の状況
新卒でデジタルマーケティングの会社に入社されたとうかがいました。簡単に当時の担当業務について教えてください。
大学を卒業して、大手のグループ企業であるデジタルマーケティングの会社に入社しました。配属先は事業開発の部署で、担当していたのは主に大手企業向けのアプリや広告サービスといった新規事業開発のディレクションです。
事業開発に配属されたのは同期の中でも私だけという環境でしたが、学生時代から「社会課題をビジネスやテクノロジーで解決したい」という想いがあったので、新卒ながらも必死でプロジェクトに打ち込んでいました。前職には5年ほど在籍したのですが、学びも多く、とてもやりがいを感じていました。
ご自身が担当したサービスが実際に店舗などで使われるのは、特別なうれしさがあったのではないでしょうか?
はい。それは本当にたまらない瞬間でした。私が関わったサービスを大手の小売店企業に導入していただいたことがあります。そのときは、エンドユーザーの方がスマホをかざしてクーポンを受け取ったり、アプリを活用したりしている様子を日常の中で目にすることができて、大きなよろこびでした。

充実した毎日のように思えるのですが、転職を意識したのはどのようなきっかけがあったのか教えてください。
一番大きかったのは、「こだわり抜いて開発したプロダクトが、ユーザーの手に届かない」ということを何度か経験したことです。
チームみんなでギリギリまでがんばった大型プロジェクトが、リリースの直前になって案件自体が立ち消えになってしまったことが数回ありました。
仕方ないとは思いながらも、気持ちを込めてつくりあげたものを世の中に出すことができなかったのは、つらい経験でした。
リリース直前で立ち消えになるのは、けっこうなショックですね…
そうですね。でも、そういった経験をしたことで「ただつくるだけではなく、顧客が何を求めているのかを自分自身で把握できるようになりたい」と強く思うようになりました。
要件定義やプロジェクトマネジメントといったプロダクト側だけではなく、営業やマーケティングといったビジネス側でも顧客と深い接点を持ちたいと考え始めたんです。これが転職を意識することになったきっかけのひとつです。
もうひとつは、周囲との「熱量差」を感じ始めたことでした。もちろんみんながんばっていたのですが、私は特に「絶対に成果を出して事業を成長させたい」という気持ちが強くて、少しずつまわりとのギャップを感じるようになりました。
ただ、自分と同じ熱量をみんなに強要するわけにもいかず、そんな状態で私が組織をひっぱっていくことに限界を感じてきました。
そこで、理想とするプロダクトづくりと同じような高い熱量で仕事ができる環境があれば挑戦してみたいと思うようになり、入社5年目のタイミングで転職活動を始めました。
転職活動について
転職活動はどのようにスタートされたのでしょうか?
まずは情報収集をしようと思い、カジュアル面談ができるサービスに登録しました。前職でのプロダクトマネジメントしか知らなかったので、世の中の動向や相場のようなものを把握したいと考えたからです。
カジュアル面談をしたのは、トータルで30〜40社ほどです。幅広い業種、さまざまな事業規模の会社とお話しさせていただきました。
30〜40社と面談を重ねる中で、どのような軸で企業を見ていたのですか?
譲れない軸として考えていたのは2点あります。ひとつは「顧客志向で事業づくりやプロダクト開発ができること」。もうひとつは、「会社やプロダクトが進むべき方向性について、メンバー全員が共通認識を持ち、高い熱量で取り組む風土があること」です。
転職活動を進める中で、不安や苦しいと感じた局面はありましたか?
「軸をどこに置くべきか」という部分でずっと不安がありました。まわりとの熱量差や毎日のがんばりが事業の成長につながらないといった前職での悩みが、転職したとしてもまた同じように起きるのではないか。この悩みは環境を変えることで本当に解決するのだろうか。そういう不安な気持ちがありました。
そんな中で、ディプコアの転職エージェントである青木とのやり取りが始まります。印象に残っていることはありますか?
とても印象に残っているのは、最初の面談で青木さんから「2社目の転職が一番重要だと思います」と言われたことです。
1社目の文化や仕事の進め方は、自分が思っている以上に染み付いている。環境を変えたとしても、2社目を1年以内に退職してしまうケースが割と多い。だからこそ、焦ることなく、じっくりと考えた方がいい。そんなアドバイスだったと記憶しています。
転職活動中はもちろん、2社目である現職に入社したいまでもそのアドバイスを思い返すほど、強く印象に残っています。ほかの転職エージェントからはそういった話は出てこなかったので、特に印象的でした。
現在の状況
転職活動を経て、2025年2月にScovilleに入社されています。入社の決め手について教えてください。
一番は、私が軸にしていた「徹底的な顧客志向」と「組織としての熱量の高さ」が感じられたからです。
選考や面談を通じて、役員をはじめメンバー全員が中長期での価値提供やプロダクト開発に本気で向き合っていることが伝わってきました。また、チームで成果を出すために「個人の能力」にも強い情熱を注いでいるところに惹かれ、「ここなら思い切り挑戦できる」と感じて入社を決めました。

入社前に魅力に感じていたという組織の熱量や個人の能力開発ですが、入社してみて実際はどうでしょうか?
この部分については、期待通りというか、期待以上だと思います。入社前に聞いていた制度や会社としての考え方が、現場では徹底的に実行に落とし込まれていたからです。
たとえば個人の能力開発において特に驚いたのは、オープンでストレートなフィードバック文化があることです。個人の悩みや課題に対して、周囲が忖度することなく問題の本質を指摘してくれます。
私自身、入社後にまわりのメンバーのスキルの高さに自信を失いかけ、ひとりで悩みを抱え込みそうになったことがありましたが、このフィードバック文化のおかげで持ち直すことができました。
よろしければ何があったか教えていただけますか?
そうですね。以前の私は完璧主義なところがあり、自分が納得できるまでボールを持ち続けてしまうことがありました。組織で仕事をする以上、良くないことだとはわかっていながら、自分ではなかなか改善できていませんでした。
そんな私に、「ひとりでどうにかしようとせず、周囲の力を借りて早く成長しなさい」とフィードバックしてくれたメンバーがいたんです。
そこから自分の行動パターンが変わりました。「まわりを信じて頼って良いんだ」「力を借りることは悪いことではなく、プロジェクトを前に進めるために必要なことなんだ」と思えるようになったんです。それ以来、完成度が荒い状態でもすぐに他のメンバーに相談に行くようになりました。社内の知見を借りながら、ある意味で泥臭く動いていく姿勢が身についたと思っています。
前職では「営業やマーケティングといったビジネス側でも顧客と深い接点を持ちたい」とおっしゃっていました。現在はPMMという役割ですが、どのような変化を感じていますか?
成果の出し方に対する視野が大きく広がったと感じています。私自身、営業経験がない中で顧客と直接対話することに当初は苦手意識がありました。
でも、社内で「まずは自分の得意な領域から勝負すれば良い」とアドバイスをもらったことで、トークの巧みさなどにとらわれないようになりました。「アフターフォロー体制はこうしておこう」と事前に想定したり、複雑な業務の整理を先に済ませておいたり、苦手意識があることに頭を悩ませるよりも、自分の強みを活かした動きを取ることで周囲や顧客からの信頼を積み重ねていきました。
また、以前は自分の想像できる範囲でしか顧客理解ができていませんでした。しかしいまは、自分のフィルターを一度はずし、相手の状況や課題を一緒に整理・分析することで顧客理解を深めていく手法を学んでいます。
まさに「顧客と深い接点を持ちたい」という想いが形になっていますね。直近でやりがいを感じたエピソードがあれば教えてください。
現在、AIを活用した面接・採用支援プロダクトの事業推進を担当しています。そのなかで、あるクライアントとのやり取りがとても印象に残っています。
その企業は「欲しい人材を採用しきれていない」という課題をお持ちでした。深くヒアリングしていくと、「書類選考に割くリソースが足りず、候補者を見切れないため機会損失をしている。しかし、リソースを増やして書類通過数が増えると、今度は面接対応がパンクする」という数と精度のジレンマに悩んでいらっしゃいました。
そこで、クライアントの状況に寄り添い、「書類選考の質とスピードを両立させるために、AIを用いた選考・面接プロセスを導入しませんか」と提案しました。この提案が深く刺さり受注につながっただけでなく、採用活動が終了したときには「このプロダクトがなかったら本当に大変でした」と感謝の言葉をいただくことができました。
前職で感じていた「つくっても使われない」とか「成果につながらない」という悔しさを乗り越え、クライアントの真のペインを捉えたプロダクトで直接価値を届けられている実感があり、大きなやりがいになっています。
最後に
PMMとして成果を出されていますが、今後はどのようなキャリアを描いていきたいとお考えですか?
最終的には、顧客の真のニーズに合わせて最新の技術を適用し、スポットでのお付き合いではなく、中長期にわたって愛され続けるプロダクトをつくっていきたいという想いがあります。

現在はまわりの力を借りながら学びつつ進めている部分も多いのですが、ゆくゆくはプロダクトのビジョンや事業戦略そのものを自分自身でリードし、周囲を大きく巻き込んでいける存在になりたいと思っています。
そのためにも、顧客の状況を正確に理解する力や、理想と現状のギャップを的確に定義してキャッチアップしていく力を磨いていきたいと考えています。
ありがとうございます。最後に、かつての一条さんのようにキャリアや環境に「違和感」を持ちながら働いている方へメッセージがあればお願いします。
仕事の中で違和感を覚えたり、引っかかりを感じるときは、自分が目指している理想と現状との間にギャップがあるときだと思います。まずは、その違和感を無視せずに、一度正面から向き合ってみることが大事だと思います。
違和感の原因が「外部環境」にあるのか。それとも「自分のがんばりやスキルの問題」にあるのか。見極めるのは難しいかもしれません。ただ、社内だけでなく外の世界にも目を向けて、たとえば誰かのアドバイスをもらうことで、違和感の解明につながるかもしれません。
私自身、前職で違和感を抱えてから転職を決意するまで相応の時間がかかりました。でも、外のキャリアやいろんな働き方に触れ、自分が納得できるまで悩み抜いたからこそ、「2社目への転職」という大きな覚悟を決めることができました。
人によって状況が異なりますし、明確な答えがないことなので、「転職すれば良い」とか「環境を変えればすべて解決する」と言うつもりはありません。でも答えがないからこそ、自分の違和感から目を背けずに「この違和感の正体はなんだろう?」と考え抜いてみてください。そのプロセス自体が、今後のキャリアにきっと役に立つと思います。
(本記事は、2026年8月に実施したインタビュー時点の内容であり、現在とは一部異なる場合があります)

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