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取材ノート2026.08.03

量子コンピュータは、もう未来の話じゃない。日本発スタートアップQunaSysの取材から見えた「社会実装」の現在地。

量子コンピュータは、もう未来の話じゃない。日本発スタートアップQunaSysの取材から見えた「社会実装」の現在地。
山内基

山内基

株式会社ディプコア ThinkD編集長

2003年、企業の採用広告のコピーライターとしてキャリアをスタート。日本経済を牽引する大企業から数々の上場企業、設立されたばかりの社員数名の企業まで、担当した企業の規模はさまざま。そしてIT・流通・小売・不動産・建築・介護・自治体など業種もさまざま。幅広い企業の採用広告を経験。広告制作以外にも、集客マーケティングや業務改善にも従事。2024年8月、株式会社ディプコアでWebメディア「ThinkD」の立ち上げに参画。インタビュー、撮影、記事執筆、編集などを担当。

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「量子コンピュータ」という言葉を耳にしたことはあっても、その実態をリアルに理解している人はどれくらいいるでしょうか。

正直に言うと、ThinkDで取材をする前の私もそうでした。「なんとなく凄そう」「いつか未来の社会をガラリと変えるかもしれないもの」。それくらいの、どこか遠い距離感で捉えていたのです。

しかし、取材の準備を進め、国内外の動向をインプットする中で、その認識は一変しました。 量子コンピュータをめぐる戦いは、すでに単なる研究室の中の「基礎研究」のフェーズを終えています。いま起きているのは、「どの国、どの企業が次の新しい産業の主導権を握るか」という、世界規模の激しい地政学・経済競争だったのです。

なんとなく“これから来るはずの未来”だと思っていたものは、実はタイムリミットが迫っている極めてリアルな「現在の課題」でした。


ニュースでは見えない「3つのレイヤー」とソフトウェアの重要性

量子コンピュータの競争を理解する上で、まず知っておくべきなのは、この産業が大きく「ハードウェア」「ミドルウェア」「ソフトウェア」という3つのレイヤーに分かれて進んでいるということです。


①ハードウェア

役割と特徴:量子コンピュータの「機体・マシン」そのものをつくる領域
トレンド:米国の巨大テック企業が巨額の投資を行い、ニュースでも最も注目されやすい


②ミドルウェア

役割と特徴:ハードとソフトをつなぎ、制御や計算の最適化を行う領域
トレンド:量子マシンの性能を最大限に引き出すための「通訳」であり、実用化の鍵を握る


③ソフトウェア

役割と特徴:新薬開発や新素材開発など実際のビジネスに量子計算を応用する領域
トレンド:「どう使うか」という社会実装の最前線であり、ビジネス価値を生み出す主戦場


一般的なニュースでは、ハードウェアの派手な進化が注目されがちです。しかし、どれほど強力なハードウェアが完成しても、それを動かす仕組み(ミドルウェア)や、具体的な課題を解くアプリケーション(ソフトウェア)がなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。

量子コンピュータは決して、何でも一瞬で解決してくれる「魔法の杖」ではありません。人間と同じように得意・不得意があります。だからこそ、「この技術をどう事業に組み込み、社会実装するか」というソフト面の視点こそが、今後の産業の成否を分けるのだと思います。


答えが決まっていない分野に、仕事人生のすべてを「All in」でベットする

この「ミドルウェア」と「ソフトウェア」の領域に軸足を置き、日本の量子技術の最前線を走っているスタートアップが、ThinkDで取材したQunaSys(キュナシス)です。

同社は、量子コンピュータを用いたソフトウェア開発や、量子技術を実際のビジネスに活かすためのコンサティングサービスを展開しています。取材に応じてくださったCFOとCOOのおふたりは、すぐそこまで迫っている未来について、非常に熱っぽく語ってくださいました。

新しい産業が誕生しようとしている黎明期において、まだ誰も正解を知らない、答えが決まっていない分野に自分のキャリアや人生を「All in(すべてを賭ける)」している。

長い仕事人生の中でも、そんなシチュエーションに立ち会えるチャンスはそう多くはないはずです。だからこそ、リスクを恐れずに未知の世界を目指す挑戦者の言葉は、取材した私の心に強い印象を残しました。


未来はある日突然訪れるものではない

量子技術のようなディープテックの世界を見ていると、未来はある日突然、SF映画のように目の前に現れるわけではないということに気づかされます。

それは、QunaSysをはじめとする挑戦者たちが、不確実性の中で「人生の時間」という最大のリスクを賭け、日々繰り返してきた泥臭い判断と実行の積み重ねです。その無数の打鍵の先にしか、新しい時代はやってきません。

「SFの未来」を「手触りのある現実」へと変えようとしている日本のスタートアップの挑戦を、ぜひ本編のインタビュー記事から感じ取っていただければ幸いです。



(文:ThinkD編集長 山内 基)

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