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トップThinkD 取材ノートマーケットインか、プロダクトアウトか。優れた起業家が実践する「往復運動」の本質。
取材ノート2026.08.03

マーケットインか、プロダクトアウトか。優れた起業家が実践する「往復運動」の本質。

マーケットインか、プロダクトアウトか。優れた起業家が実践する「往復運動」の本質。
山内基

山内基

株式会社ディプコア ThinkD編集長

2003年、企業の採用広告のコピーライターとしてキャリアをスタート。日本経済を牽引する大企業から数々の上場企業、設立されたばかりの社員数名の企業まで、担当した企業の規模はさまざま。そしてIT・流通・小売・不動産・建築・介護・自治体など業種もさまざま。幅広い企業の採用広告を経験。広告制作以外にも、集客マーケティングや業務改善にも従事。2024年8月、株式会社ディプコアでWebメディア「ThinkD」の立ち上げに参画。インタビュー、撮影、記事執筆、編集などを担当。

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ビジネスや新規事業の立ち上げにおいて、必ずと言っていいほど議論されるのが「マーケットイン(市場ニーズ起点)」と「プロダクトアウト(製品・思想起点)」のどちらを重視すべきか、というテーマです。

「顧客の声を徹底的に聞くべきだ」という意見もあれば、「これまでにない革新的なものは、顧客の要望からは生まれない」という反論もあり、ネット上でもこの二項対立の議論は絶えません。

しかし、ThinkD編集部がこれまでに数多くの起業家を取材してきた中で見えてきたのは、決して「どちらか一方が正しい」という単純な話ではありませんでした。成功しているリーダーたちは、この2つを対立構造として捉えるのではなく、むしろ高速な「往復運動」として捉えていたのです。


「どちらが正しいか」という二項対立の罠

一般的な教科書では、マーケットインとプロダクトアウトは正反対の概念として説明されます。


・マーケットイン 市場のデータや顧客の不満を分析し、求められているものを作るアプローチ


・プロダクトアウト:自分たちの技術や「こういう世界を作りたい」という強い思想をベースに作るアプローチ


事業をスマートに進めようとするあまり、多くの人が「自社はどちらのスタンスでいくべきか」という正解探しに陥りがちです。しかし、実際の取材現場で聞かれるリアルな開発ストーリーは、そのどちらか一方だけで綺麗に完結しているものはほとんどありません。


対立ではなく「往復運動」。起業家が繰り返す4つのステップ

優れた起業家たちの思考と行動を観察していると、彼らはマーケットインとプロダクトアウトの間を、驚くほどのスピードで行ったり来たりしています。そのプロセスは、次のような「往復運動」のサイクルです。


▼ステップ1:プロダクトアウト

「これがあったら絶対におもしろい」という強い意志や仮説をもとに、まずは形にしてみる(作ってみる)


▼ステップ2:マーケットイン

実際のユーザーに使ってもらい、容赦ないフィードバックやデータを集める(市場の反応を見る)


▼ステップ3:プロダクトアウト

集まった声を踏まえつつも、自分たちの軸をブレさせずにプロダクトを磨き上げる(修正する)


▼ステップ4:マーケットイン

独りよがりになっていないか、もう一度市場に問いかける(もう一度市場を見る)


強い思想(プロダクトアウト)なきマーケットインは、他社の真似事のようなサービスに陥りがちです。一方で、顧客視点(マーケットイン)なきプロダクトアウトは、誰にも使われない自己満足に終わってしまいます。

だからこそ、この両極を絶え間なく行き来することこそが、事業を成功に導く唯一のルートなのだと感じます。


求められるのは、圧倒的な「密度」と「テンション」

この往復運動自体は、いわゆる「PDCAサイクル」や「リーンスタートアップ」の文脈で耳にしたことがある方も多いかもしれません。しかし、取材を通じて感じたことは、成功している起業家は、このサイクルを回す「密度」と「テンション(熱量)」が桁違いに高いということです。

彼ら・彼女らは、1週間に何度もプロトタイプを修正して顧客のもとへ走ったり、ユーザーの些細な一言からプロダクトの本質的な欠陥を見抜いて夜通しで仕様を変更したりします。

批判的なフィードバックを受けても心が折れない「高いテンション(熱量)」を維持しながら、誰よりも細かく、誰よりも速く「高密度」に往復を繰り返す。これこそが、不確実な市場の中で「正解」を手繰り寄せる起業家の底力なのだと思います。


事業を前へ進めるヒントとして

「マーケットインか、プロダクトアウトか」という議論に、終わりはありません。なぜなら、そのどちらも事業には不可欠だからです。

もし今、みなさんのプロジェクトが行き詰まっているとしたら、それはどちらかの型が間違っているのではなく、「往復運動」のスピードや密度が落ちているサインかもしれません。「今、自分たちはどちらのフェーズにいるのか」を客観的に見つめ直し、次の半歩をどちらに踏み出すべきかを考えるヒントにしてみてはいかがでしょうか。



(文:ThinkD編集長 山内 基)

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