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テクノロジーを前提とした「新しい形の建設業・現場産業」を目指して|下岡代表インタビューVol.3

テクノロジーを前提とした「新しい形の建設業・現場産業」を目指して|下岡代表インタビューVol.3

2026.10.14

本日のゲスト

株式会社クアンド 代表取締役社長 下岡 純一郎

設立:2017年

事業内容:建設・製造現場向け遠隔コミュニケーションツール「SynQ Remote」の開発・提供、現場産業向けDX支援など

前回のふりかえり

現場の生の課題から生まれた遠隔コミュニケーションツール『SynQ Remote』。ツールベンダーとして順調に成長するなか、下岡氏はSaaS単体での成長にとどまらない「リアル×AI」のアプローチを選択。 宮崎の建設関連企業である南都技研のグループインを実行し、現場のオペレーションに直接入ることで事業・採用の両面で劇的な成果を生み出します。新しい可能性に挑戦し続ける下岡氏が大切にしている思想に迫ります。

境界線を越えた先の新産業と地方をアップデートするための未来図

─────南都技研さんとの取り組みを踏まえ、今後は実業とテクノロジーの掛け算をさらに加速していかれるかと思います。改めて、このモデルが持つ今後の可能性やクアンドとしての事業の展望について教えてください。

まず、私たちが目指している事業の展望として大きく2つあります。

1つ目は、南都技研で実証したように、M&Aによって地方の建設会社にグループインしてもらい、テクノロジーを介入させることで収益性を劇的に高めていく「AIロールアップモデル」を連続して実行していくことです。

そして2つ目が、それを推進する中で副次的に生まれてくる、現場業務を自律的にまわす「バーティカルなAIエージェント」の開発と提供です。

インターネットという技術が大きく構造を変えたのは、広告や証券、ECといった情報産業に近い領域だったと思います。裏を返すと、それ以外のレガシーな現場産業は、ITツールを導入するだけでは、なかなか根本的な変化を起こすことができませんでした。

しかしEC業界が「小売業なのか?それともIT業なのか?」と聞かれたときに、どちらの枠組みにも収まらない新しいカテゴリになったように、すべての産業で同様の構造変化が起きるのではないかと考えています。

私たち自身も、単なるIT会社なのか、建設会社なのかという既存の境界線を越えて、AIやAIエージェントといったテクノロジーを前提とした「新しい形の建設業・現場産業」を作り出していきたいんです。

─────その実現のために、組織的な課題があれば教えてください。

課題というか、やはり採用はポイントになると思っています。

お客様の業務の中に深く入っていき、お客様の業務や会社そのものを変えていくような仕事になります。それを営業と呼ぶのか、カスタマーサクセスと呼ぶのか、FDE(※)と呼ぶのかはわかりませんが、ビジネスサイドもエンジニアサイドも採用強化中です。

(※)FDE:Forward Deployed Engineer(フォワード・デプロイド・エンジニア)の略。顧客の現場に深く入り込み、自社のソフトウェアやAIを活用して課題発見からシステム実装・定着までを一貫して行う職種。

あとは、何よりも「地方のレガシーな産業を変えていきたい」という私たちの志に共感いただける方を求めています。お客様の中に入り込む現場の仕事に加えて、南都技研に続くM&A先を探しているので、そういう文脈でも力を発揮したいという方がいらっしゃれば、ぜひ一緒に仕事がしたいと思っています。

また、長期的なスパンで見れば、グローバル展開にも挑戦したいと考えています。日本の建設現場が持つ現場力や技術力は、世界的に見ても極めて高い水準にあります。『SynQ Remote』のようなツールは物理的な距離や空間の制約をなくしてくれるものですが、これを世界に展開していくことで、これまで以上に大きな価値を社会に提供できるのではないかと思っています。

─────非常にスケールの大きな展望ですね。会社や事業から少し離れて、ご自身が描いている今後のキャリア像についても教えてください。

個人的には、「これぞスタートアップ」という王道の成長戦略はやらなくていいと思っています。たとえばSaaS企業であれば、年間定期収益であるARRをどうやって伸ばしていくかや最新のテクノロジーをいかに早く導入するかが重要になると思うのですが、そういった競争をするつもりはありません。

もちろん、その成長戦略が間違っているということではなく、私は違う戦略を取るということです。

私はこれまで、福岡や北九州という「地方」だからこそ生まれる独自の経営思想を大切にしてきました。都市部とは少し離れた場所にあるからこそ、レガシーな産業がいまも色濃く残っています。そして、それらとテクノロジーが組み合わさることで、新しい何かが生まれる可能性があると思っています。

福岡には、登山アプリの「YAMAP」や歴史Podcastの「コテンラジオ」のように、主流とは一味違う強い思想を持った企業やコンテンツが生まれる土壌があると思っています。東京ではない場所だからこそつくれるものがあるはずで、それを今後の経営者としてのキャリアのなかで生み出していきたいと考えています。

そして、個人のキャリアプランとしては、起業家や経営者としての役割を終えたあとは、政治や行政の世界に進みたいと考えています。そして、最終的には学校をつくったり、教育に関わりたいと思っています。

─────ビジネスの次は政治と教育ですか!どのような背景からそうお考えなのでしょうか?

私の根本には「地方をアップデートしたい」という想いがあります。それを実現するためには、ビジネスだけでは足りないからです。

その土地の産業も含めて、地域を本質的に変革するためには「産業・経済」「政治・行政」「教育」の3つの要素が有機的につながることが不可欠だと思っています。そのトライアングルを自分自身でしっかりまわせるようになること。そして、地方を本当の意味でアップデートすること。これが、私のキャリアプランです。

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インタビューを終えて

山内基

山内基

株式会社ディプコア ThinkD編集長

「ARRを追い、時価総額を引き上げる」というスタートアップの王道ルートから外れることには、少なからず恐怖や葛藤が伴うはずです。下岡代表ご自身も、M&Aという選択に対して「SaaSでT2D3のような爆発的な成長をしていない中で、逃げなのではないか」と深く悩んだと明かしてくれました。 その恐怖や葛藤を乗り越えられたのは、「ツールを売るだけでは本質的な課題は解決できない」という定説への違和感から目を逸らすことなく、建設業界の労働力不足の解決に寄与し、地方から産業をアップデートしたいという原点の志に立ち返ったからなのだと思います。 かつてECが小売とITの境界線を溶かしたように、同社も「リアル×AI」というアプローチで既存の枠組みを越えようとしています。世の中が大きく変わるのは、常識を疑う視点と、それをやり切る実行力を兼ね備えた存在が現れたときです。クアンドがその変革の当事者になる日も、そう遠くないのかもしれません。